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ヴァンパイア小説総ざらえ その4 ゼロ年代以降 …2016年6月1日

 6月といえば、初音ミクさんの北米10都市ライヴツアーも、5日のメキシコシティーを残すのみ。疲れが出ないように(真顔)がんばっていただきたいと応援していますよ。

 さて、何の話だっけ、あ、そうそう、ヴァンパイア小説の続きでしたね。では…

 

アイリッシュ・ヴァンパイア」ボブ・カラン著 Bloody Irish(2002)
 早川書房(2003)
 近代吸血鬼小説の祖「カーミラ」と「ドラキュラ」の作者はいずれもアイルランド人。なので、そこにはケルト的な幻想が色濃く反映されている、というのがカランの持論。その伝統を継ぐべく書かれた吸血鬼小説集。怪奇小説としても逸品ぞろい。

 

「サンシャイン&ヴァンパイア」(上・下) ロビン・マッキンリイ著 Sunshine(2003)
 扶桑社ミステリー(2007)
 魔物と人間の大戦争の10年後、人間社会の一角には魔物たちのテリトリーが。そこへ拉致された女性が自らの力に目覚め、吸血鬼と不思議な関係に。ニューベリー賞受賞作家によるファンタジー。

 

「ザ・ストレインギレルモ・デル・トロ&チャック・ホーガン著 The Strain(2009)
早川書房(2009)→「沈黙のエクリプス」(上・下)ハヤカワ文庫NV
「暗黒のメルトダウン」(上・下) The Fall(2010)
 ハヤカワ文庫NV(2012)
「永遠の夜」(上・下) The Night Eternal(2011)
 ハヤカワ文庫NV(2012)
 滑走路上で沈黙した旅客機。そこからまん延する謎の悪疫により、崩壊していく人間社会。それは太古の種族の復活を意味していた。「パンズ・ラビリンス」「パシフィック・リム」などで知られる映画監督によるノンストップ・アクション・ホラー3部作。

 第2巻で人類は崖っぷちに追い詰められます。第3巻はほとんどポスト・アポカリプスの様相を呈していますが、クライマックスでは、思わず何じゃこりゃ?と叫んでしまうトンでもな展開が…。でも、面白さは保証いたします。

 

「新ドラキュラ 不死者」(上・下) デイカー・ストーカー&イアン・ホルト著 Dracula:The Un-dead(2009)
 MF文庫ダ・ヴィンチメディアファクトリー)(2013)
 ブラム・ストーカーの子孫が書いたという触れ込みの続編。エリザベト・バートリや切り裂きジャックをからめたりして、工夫したつもりかも知れませんが、ドラキュラ愛に死す、というのはどうよ?吸血鬼軟派化の波はついに御大にまで!そういや「ドラキュラZERO」という似たような映画もありましたな。公式新作とうたっておりますが、黒吉は断固認めません!ヴラド公、地獄から鉄槌をお願いします。

 

ヴァンパイアハンターリンカーン」 セス・グレアム=スミス著 Abraham Lincoln Vampire Hunter(2010)
 新書館(文庫判)(2011)
 「リンカーン/秘密の書」という映画の方が有名かも。大統領の死後に発見された秘密の日記という体裁で、もうひとつのアメリカ史が語られます。おバカなアイデアを、ものすごい力技ですぐれた歴史改変小説に仕上げています。著者については「高慢と偏見とゾンビ」の一発屋だろうとたかをくくっていたのですが、ほんにお見それいたしました、へへーっ!

 

「殺戮病院」 ブレイク・クラウチ、ジャック・キルボーン、ジェフ・ストランド&F・ポール・ウィルスン著 Draculas(2010)
 マグノリアブックス(オークラ出版)(2016)
 TVドラマ「ウェイワードパインズ出口のない街」の原作者クラウチや大家のウィルスンなど豪華メンバーによる合作。ルーマニアで発掘された異形の頭蓋骨に噛みつかれた医師は、同様の怪物に変貌。次々に感染してゆく人々。隔離された病院から脱出する術はあるのか…って、ほとんどゾンビものじゃんこれ!ま、面白いからいいけど。

 

 ふう、やっと現在にたどり着きました。それにしても見事に英米系ばかりですな。他の国では書かれていないのか、それとも翻訳されていないだけなのか?ご教示いただければ幸いです。あっ、しまった!1冊忘れていました。

 

「MORSEモールス」(上・下) ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト著 Lat Den Ratte Komma In(2004)
 ハヤカワ文庫NV(2009)
 珍しくスウェーデン産です。小さな町に引っ越してきた少女の周辺で起こる残酷な殺人事件。主人公の少年(12歳)の初恋は胸がしめつけられるような哀しい結末に。吸血鬼小説の伝統を継ぐ、恐ろしくも美しい佳品。

 

 あと、本家?ルーマニアの作家ミルチャ・エリアーデの「令嬢クリスティナ」(作品社 1995年刊)なる1冊があったはずなのに、どこをどう探しても見つからない。紛失したのか、間違って売っぱらったのか?まことに申し訳ありません。

 

 他には「ドラキュラ紀元」のヒロイン、ジュヌヴィエーヴちゃんの活躍する3部作があるのですが、「ウォーハンマー」というゲーム(RPG)世界を舞台とする異世界ファンタジーなので、パスしました。参考までにデータを書いておきます。著者のジャック・ヨーヴィルキム・ニューマンの別名です。

ドラッケンフェルズ」Drachenfels (1989) HJ文庫G(ホビージャパン)(2007)
「吸血鬼ジュヌヴィエーヴ」Genevieve Undead (1993) HJ文庫G(ホビージャパン)(2007)
「ベルベットビースト」Beasts in Velvet (1991) HJ文庫G(ホビージャパン)(2007)

「シルバーネイル」Silver Nails(2002)HJ文庫G(ホビージャパン)(2008)…短篇集

 それにしてもジュヌちゃんはヴラド公よりも年上なのに、見た目は少女、永遠の16歳。初音ミクさんみたいだ。かわいいのう!え、初め(その1)に言うたことと全然違うやないかって?さぁ、そんなことも申しましたかのう。どうも年寄りは忘れっぽくていけませんな。はっはっは。では、さいならー


(注)

ジョン・ニューベリー賞は米国児童図書館協会が毎年、すぐれた児童文学の著者に授与する賞。マッキンリイの受賞は1985年「英雄と王冠」(ダマール王国物語2 ハヤカワ文庫FT 1987年)で。

・「パンズ・ラビリンス」El laberinto del fauno はメキシコ・スペイン・米合作のダーク・ファンタジー映画。2006年公開。撮影、美術、メイクの3部門でオスカー獲得。

・「パシフィック・リム」Pacific Rim は2013年公開の米ワーナー映画。巨大怪獣を有人の巨大ロボットで退治する話。日本のアニメ・特撮へのオマージュ満載。でも、黒吉的には怪獣やロボットのキャラが立ってないので、いまいち好みではありません。それから戦闘シーン暗すぎ。白昼堂々とやるべし。

・エリザベト・バートリは16世紀ハンガリーの貴族。「血の伯爵夫人」の名で知られる伝説的な連続殺人者。吸血鬼のイメージで語られることも多い。

・「ドラキュラZERO」Dracula Untold は2014年公開の米ユニヴァーサル映画。キャッチコピーの「その男、悪にして英雄。愛する者のため、悪にこの身を捧げよう―」がすべてを語っています。けっけっけ!なお、ユニヴァーサルはこの映画が当たれば、シリーズにして往年のモンスターを続々と復活させようと目論んでいたようですが、大コケにコケたのであきらめたみたい。ご同慶の至り。

・「リンカーン/秘密の書」Abraham Lincoln: Vampire Hunter は2012年公開のフォックス映画。制作はあのティム・バートン

・「高慢と偏見とゾンビ」Pride and Prejudice and Zombies(2009)はあのジェーン・オースティンの名作に、あろうことかゾンビをこきまぜた、いわゆるマッシュアップ小説。原作の文章の7割はそのままだとか。邦訳は二見文庫(2010年)。ジェーンおばさん天国で怒ってると思いますよ。

・「ウェイワードパインズ 出口のない街」Wayward Pines (2015-2016) は米フォックス制作のTVシリーズ。現在のところ2シーズン20話。M・ナイト・シャマランが監督したというので話題に。原作は「パインズ -美しい地獄ー」(ハヤカワ文庫NV 2014年)で始まる3部作。