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わが心の仮面ライダー …2016年5月19日

 スーパーヒーローについては、これまでアメ・コミのキャラクターばかり取りあげてきましたが、黒吉の最愛のヒーローは、実は仮面ライダーです。しかし、一口に仮面ライダーといっても、1号から現在のゴーストまで、もはや何人いるのかすら見当がつかなくなってしまいました。でも数多のライダーの中で、黒吉の心に残るのはやはり昭和ライダーの面々です。

 思えば、日本万国博覧会の熱気もようやく冷めた昭和46年(1971年)春に、大阪の毎日放送をキー局にして、地味に始まったのが初代ライダーでした。当初は「怪奇アクションドラマ」という触れ込みだったので、どちらかといえば暗いトーンのストーリーに、ホラーな味付けがほどこされていました。

 黒吉は初回からリアルタイムで観ていましたが、第一印象は「チープ」の一言につきます。とにかく低予算まる出し。セットも衣装も目をおおうばかり。役者さんも、失礼ながら演技がうまいとは言い難い。しかしながら、何か心の琴線にひびくものがあって、その後も長く見続けることになりました。

 仮面ライダーの何が魅力かというと、まず「異形」ということでしょう。もともと犯罪組織に「怪奇バッタ男」として改造されたので、それまでのヒーローにない不気味ともいえるマスクになっています。大きな赤い複眼、2本の触角、バッタの顎をデザインした口元。見方によっては鬼のようでもあります。

 この異形は、もはや人間でなくなってしまった、という悲しみをさらに増幅させる役割を果たしています。スカイライダーの第1話に「その姿でどうやって生きていくつもりだ?」と組織への復帰を迫られる場面がありますが、この一言にライダーの悲劇が凝縮されています。

 もうひとつのキーワードは「孤独」です。昭和ライダーは最終的に10人を数えますが、基本たった一人で戦っていました。サポートしてくれる仲間がいる場合でも、戦場には多くの場合、単身赴いたのです。「ロンリー仮面ライダー」という挿入歌は、その哀感を切々と歌っていて、黒吉は大好きです。

 また、ライダーの武器は基本的に、改造された肉体とバイクのみ。きょう日のライダーのように、カードやメダルで便利な武器を装着できるなどということはありません。変身後のライダーや怪人を演じられた大野剣友会の方々の、ときに命がけのアクションは、番組のチープさを補って余りあるものでした。深く感謝する次第です。

 あと大切なのは、原作者の石(ノ)森章太郎さん、プロデューサーの平山亨さんはじめ、制作スタッフの主要メンバーが戦争を体験した世代ということ。初代ライダー冒頭のナレーションに「仮面ライダーは人間の自由のためにショッカーと戦うのだ!」とありますが、人を殺人機械に変えてしまうショッカーとは、かつて国民を戦争に駆り立てたどこかの国のメタファーではないでしょうか。二度とそのようなものに支配されないように、という無言の祈りが番組に込められています。

 これら仮面ライダーの魂(スピリッツ)といえるものが、平成ライダーに引き継がれたかというと、残念ながらノーといわざるを得ません。かろうじて初代平成ライダークウガに残照がある程度でしょうか。もう一度原点に立ちかえったライダーの雄姿が見たいと、黒吉は切に願っています。


(注)

昭和ライダー…ここでいうのは、同じ世界観の中で活躍した10人のライダー。つまり1号、2号、V3、ライダーマン、X、アマゾン、ストロンガー、スカイライダー、スーパー1それにZX(ゼクロス)です。

・ホラーな味付け…残酷描写もありで、第2話で倒されたコウモリ男などは、グシャッとやられて赤い血が飛び散るという、今ではとても考えられないような有様でした。

・低予算…当時の制作状況を描く「仮面ライダーをつくった男たち」(村枝賢一 講談社 2007→増補版2011)というマンガがありますが、それによると、労働争議中のスト破りというとんでもない状況の中、ないないづくしで制作開始という、涙なしには聞けないような話が載っています。

 それでも、ライダーマスクやバイク(初代サイクロン)などは、すぐれた造形で、今でも大好きです。

・異形…原作者の石(ノ)森章太郎さんが髑髏(どくろ)の仮面にこだわったのは有名な話。

・それまでのヒーローにない…しまった!戦前から黄金バットという大先輩がおられました。「輝くどくろは正義の印…」という主題歌で、1966年に実写映画化、翌1967年からTVアニメも。

・スカイライダー…8人目のライダー。番組名はただの「仮面ライダー」(1979~80)。原点回帰という意味で、あえて初代と同じ番組名に。でも、飛行能力を持たせたのは良かったのか悪かったのか?主人公の筑波洋は村上弘明さんが演じました(これがデビュー作)。黒吉のフェイバリット・ライダー。

大野剣友会…殺陣師の大野幸太郎さんが設立した演劇・殺陣集団。高い矜持と師弟の絆に支えられ、子ども番組でも最高の演技を披露しました。「仮面ライダー」という番組の栄光は、この人たちなくしてはあり得ません。上記「仮面ライダーをつくった男たち」にエピソードあり。

・平山亨…仮面ライダー・シリーズをはじめ、赤影、ジャイアントロボキカイダー、バロム1、ゴレンジャーなど数多の番組のプロデューサーを務めた、東映特撮TVシリーズの父というべき存在。2013年に他界。ありがとうございました。

・ショッカー…石(ノ)森章太郎さんの原作マンガには、終盤、敵の巨大コンピューターを破壊するために潜入した2号ライダーが、組織の背後に日本国政府の影を見出して愕然とするシーンがあります。

・「仮面ライダークウガ」(2000~01)…良くも悪くも、その後のライダーへの道筋をつけた里程標番組。改造人間じゃない、敵の目的が不明(組織ですらない)、警察がバックアップ(バイクも官製)、活躍はマスコミで報道、一度も「仮面ライダー」と呼ばれない、など従来の型にとらわれないドラマづくりで話題に。主人公の五代雄介は飄々とした性格で、デビュー間もないオダギリ・ジョーさんが好演しました。仮面ライダー・シリーズとして唯一、SFファンが選ぶ「星雲賞」を受賞(2002年)。

 

ヴァンパイア小説総ざらえ その3 1980~90年代 …2016年5月17日

 お待たせしました。え、だれも待ってないって?ま、そうおっしゃらずにお付き合いください。
 さて、1980年代に入るとアン・ライスの後を追って、吸血鬼サイドから描かれた作品が増えてきます。

 

「薔薇の渇き」ホイットリー・ストリーバー著 The Hunger(1981)
 新潮文庫(2003)
「ラスト・ヴァンパイア」The Last Vampire(2001)
 新潮文庫(2004)
 前者は、原題からお察しのとおり、映画「ハンガー」の原作です。自分が吸血鬼化した愛人の老化を止めるために、自らの血の秘密を科学で探ろうとする女ヴァンパイアの話。後者は20年も経ってから書かれた続編。今度はCIAとの闘いが描かれます。

 

「奴らは渇いている」(上・下)ロバート・R・マキャモン著 They Thirst(1981)
 扶桑社ミステリー(1991)
史上空前の砂嵐を起こし、孤立させたロサンゼルスを蹂躙する吸血鬼軍団。作者の出世作になった、大スケールのアドヴェンチャー・ホラーです。マキャモンは「スティンガー」などもそうですが、描写が具体的というか、まさに映画を観ているよう。ベストセラー作家だったのに、一度も映画化されなかったのはそのせい?

 

「フィーヴァー・ドリーム」(上・下)ジョージ・R・R・マーティン著 Fever Dream(1982)
 創元ノヴェルズ(1990)
 南北戦争前夜。一隻の蒸気船でミシシッピを下る吸血鬼と人間。その友情と闘いの物語。異世界ファンタジーの雄編「氷と炎の歌」(ゲーム・オブ・スローンズ)で今をときめく人気作家による名作です。

 なお「創元ノヴェルズ」という叢書は新書判でなく、いわば創元推理文庫の文庫内文庫というべきシリーズで、モダン・ホラーを中心に冒険小説などを収録。なぜ別レーベルにする必要があったのか不明ですが、当初は青だった背色も、いつの間にか他の創元推理文庫と同色になり、その内レーベル自体が消滅してしまいました。

 

「ヴァンパイア・ジャンクション」S・P・ソムトウ著 Vampire Junction(1984)
 創元推理文庫(2001)
 12歳の天才ロック・シンガーの正体は? ワグナーの楽劇「神々の黄昏」を通奏低音に語られる壮大なダーク・ファンタジー。米・タイ二重国籍のSF作家ソムトウ・スチャリトクルの別名作品。

 

「ライヴ・ガールズ」レイ・ガートン著 Live Girls(1987)
 文春文庫(2001)
 タイムズスクエアの一角に建つ、怪しげなフーゾク店で出会った謎の美女。誘いに応じると、〇ん〇んから〇液と一緒に血まで吸われてしまうという、究極のお下品ホラー。スプラッターな描写もすごいので、よい子は読んではいけません。

 

ミッドナイト・ブルー」ナンシー・A・コリンズ著 Sunglasses After Dark(1989)
 ハヤカワ文庫FT(1997)
「ゴースト・トラップ」 In the Blood(1991)
 ハヤカワ文庫FT(1997)
「フォーリング・エンジェル」 Paint It Black(1995)
 ハヤカワ文庫FT(1997)
「ブラック・ローズ」 A Dozen Black Roses(1996)
 ハヤカワ文庫FT(1998)
 美貌の吸血鬼ソーニャ・ブルーは人間になりすました怪物たちを追うハンター。Tシャツにジーンズ、黒い革ジャンにサングラスといういで立ちで、容赦なく標的を屠っていきます。ブラム・ストーカー賞受賞のハードボイルド・アクション・ホラー。エロティシズムもたっぷり。

 

「ヴァンパイア・バスターズ」ジョン・スティークレー著 Vampire$(1991)
 集英社文庫(1994)
 原題の末尾の$は誤記ではありません(笑)。法王庁の依頼で吸血鬼退治を行う特殊部隊の話。アクション満載でほとんどアメ・コミ感覚。映画化の話はどこへ行った?

 

「ブラッド・プライス -血の召喚ー」タニア・ハフ著 Blood Price(1991)
 ハヤカワ文庫FT(2005)
 連続殺人の犯人は吸血鬼? 謎を追う女探偵の前に現れたのは…。あーロマンスがらみだ!ちっちっち。

 

「ロスト・ソウルズ」ポピー・Z・ブライト著 Lost Souls(1992)
 角川ホラー文庫(1995)
 ヴァンパイアの血をひく青年はパンク・バンドにあこがれ放浪の旅へ。血と官能(BL)の先に恐ろしい結末が…。

 

ドラキュラ紀元キム・ニューマン著 Anno Dracula(1992)
 創元推理文庫(1995)
 ヴァン・ヘルシングが敗れた結果、ドラキュラは女王の配偶者(プリンス・コンソート)に収まり、吸血鬼と人間が同居するもうひとつのヴィクトリア朝が出現。切り裂きジャックの事件を縦糸に、実在、架空を問わず多数の有名人、及び有名無名のヴァンパイア多数が入り乱れる一大絵巻。

 続編は2冊あります。

「ドラキュラ戦記」 The Bloody Red Baron(1996)
 創元推理文庫(1998)
 1918年のフランスが舞台。英国を追われたドラキュラはドイツの首相兼軍最高司令に就任し、英国への報復を開始。原題からおわかりのように、第一次大戦の独空軍の撃墜王リヒトホーフェンをめぐる物語。ただし、こちらの赤男爵は生身で空を飛びます(笑)。エドガー・アラン・ポーが重要な役どころで参戦!

「ドラキュラ崩御」 Judgement of Tears(1998)
 創元推理文庫(2002)
 ときは1959年、40年ぶりに姿を現したドラキュラとモルダヴィア公女の成婚に沸きかえるローマ。しかし吸血鬼ばかりを狙う謎の刺客も暗躍。ディオゲネス・クラブは結婚の真意を探るため、ヘイミッシュ・ボンド中佐(ヘイミッシュはジェームズのスコットランド訛りだとか)を派遣します。

 無類の面白さなので三部作で完結というのはとても残念です。でも、2014年に「Johnny Alucard」なる短篇集が出ているはず。おーい、東京創元社さーん!

 

「死にいたる愛」デイヴィッド・マーティン著 Tap,Tap(1994)
 扶桑社ミステリー(1995)
 吸血鬼を自称するサイコ・キラーとの愛憎。繰り返される猟奇殺人の果てに待つ衝撃の結末。上記のレイ・ガートン同様、よい子向けではありません。

 

「真紅の呪縛」トム・ホランド著 The Vampyre(1995)
 ハヤカワ文庫NV(1997)
 「ヴァンパイア奇譚」の第1巻。1824年に死んだはずの大詩人バイロンは、実はまだ生きている? 情熱の詩人の恐ろしくもエロティックな遍歴。

「渇きの女王」 Suppig with Panthers(1996)
 ハヤカワ文庫NV(1997)
 「ヴァンパイア奇譚」の2冊目。ヴィクトリア朝ロンドンに跳梁する吸血鬼を、あのブラム・ストーカーが追います。前作に引き続きバイロンも登場。

 

冨田勲さんさようなら …2016年5月12日

 現代音楽に大きな足跡を残された冨田勲さんが亡くなられました。その業績については広く知られていますので、今さら書くまでもないでしょう。黒吉が覚えているいちばん古い作品は、わが国でTVが普及し始めたころの海外ドラマシリーズ「名犬ラッシー」とNHKの人形劇シリーズ「宇宙船シリカ」の主題歌。どちらもいまだに歌えるくらい記憶に残っています。

 その後も黎明期のアニメ「ビッグX」やハイブリッド人形劇「銀河少年隊」をはじめ、「ジャングル大帝」「リボンの騎士」「キャプテン・ウルトラ」「マイティジャック」など、若い頃夢中になった作品(の主題歌、BGM)は数知れず。本当にお世話になりました。

 初期のシンセサイザーによるアルバム「月の光」(1974)で世界的にブレイクしたあとは、アニメや特撮の仕事をあまりされなかったのが残念ですが、お願いしようにも製作費を考えると仕方なかったのでしょう。

 最後の大作になった「イーハトーヴ交響曲」で初音ミクを起用してくださったので、黒吉は大感激。TVでメイキングを見ると、若いスタッフと一緒になって、ミクを指揮に合わせるシステムの開発にたずさわっておられました。おかげでまたミクが一段階進化したので、本当にありがたいことです。

 今頃は銀河鉄道でのんびりと天国へ向かっておられることでしょう。将来、向こうでお目にかかってお礼を申しあげる日を楽しみにしていますよ。え、お前は行くところが違うのでそれは無理だって?そんな~!


(注)

・「名犬ラッシー」は賢いコリー犬と飼い主の少年が活躍する米国製ドラマ。1957~1966放映。番組の大ヒットにより、コリー犬を飼う人が増えたのはよいが、いい加減なブリーディングによるおバカ犬も激増。若き日の藤子不二雄コンビによる漫画化あり。

・「宇宙船シリカ」は1960~62にNHKで放映された人形劇(マリオネット)。若き日の星新一さんの原作で竹田人形座が演じました。天才少年が宇宙探検に参加し、その知恵で困難や危機をのりこえる話。コパイロットにロボットを使うなど、後の海外作品に先行する場面も多数。

・「ビッグX」は1964~65にTBSで放映。(原作では)ナチスが開発した技術で巨大変身して戦う少年の話。東京ムービーの第1作ですが、経験のなさが災いして悲惨な出来に。原作(手塚治虫さん)と冨田さんの音楽はよかったんだけど…。

・「銀河少年隊」は1963~65にNHKで放映されたSF人形劇(マリオネット)。衰えた太陽を再生する物質を求める少年の大冒険。これも手塚さんの原作を「シリカ」の竹田人形座が演じました。変わっているのは、本来なら特撮を使用するシーンを虫プロダクション制作のアニメで代用?していること。

・「ジャングル大帝」は1965~66にフジテレビ放映。原作はいわずと知れた手塚マンガの代表作。つくりは丁寧だけど、説教くさい脚本はどうにかならなかったものか?アニメとしては、パチもんの「ラ○オ○キング」の方がずっと出来がいいと言わざるをえないのがつらいところ。でも、冨田さんのテーマにのって展開する雄大なオープニングは今見ても心がふるえます。

・「リボンの騎士」は1967~68にフジテレビ放映。原作はこれも手塚さんの大名作。アニメの方は残念ながら、原作の宝塚風味もなく、少年マンガみたいになってしまって大がっかり。どっかでちゃんとリメイクしてくれい!でも、ブルーレイ版「イーハトーヴ交響曲」のアンコールが「リボン」の主題歌だったので大満足。

・「キャプテン・ウルトラ」は1967年TBS放映。「ウルトラマン」の終了後、「ウルトラセブン」ができるまでのいわばショートリリーフ的な特撮番組(円谷でなく東映制作)。悪質宇宙人と戦うスペースレインジャー(超人じゃない普通の人間)の活躍を描く。話も特撮も、パルプマガジン的なゆるさがほほえましく思えるようになったのは歳のせい?

・「マイティジャック」は1968年フジテレビ放映の特撮シリーズ。円谷プロダクション制作。万能戦艦MJ号で悪の組織Qと戦う11人の勇者たち。「サンダーバード」の向こうをはって和製のメカ・ファンタジーをつくろうという意欲はよかったのだけど、原作と脚本がお粗末だったのが敗因に。でも黒吉はいまだにMJ号が大好きで「館長庵野秀明特撮博物館」東京展(2013年)の会場では、巨大なプロップ(撮影用の模型)を前にただ滂沱の涙を流しておりました。

・最後の大作…だとおっしゃっていましたが、その後バレエダンサーと初音ミクが踊る「ドクター・コッペリウス」(2016年11月11日初演)をほぼ完成された後に旅立たれました。

・「イーハトーヴ交響曲」のブルーレイ版ではセガ・モジュールのミクが踊っていますが、初演ではどうも黒吉お気に入りのTda(ティーダ)式ミクが使われたらしい。そちらも見たかった!(追記:Youtubeのダイジェスト動画ではTda式ミクが踊っています)

・行くところが違う…家人に言わせるとおたく地獄かSF地獄だそうです。仲間連中もみんな行くから、さびしくなくてよいのだとか。そういう問題ですか?

 図版は冨田さんのアナログ・レコード(LP盤)の内、黒吉の手元に残っているものです。写真がうまく撮れず、発色が悪くて申し訳ありません。

 左は「子どものための交響詩 ジャングル大帝」(日本コロムビア、1966)。黒吉が所蔵するのは1967年の再版。ジャケットは子どもにオーケストラを教えるための教本を兼ねた、美しい絵本(手塚さん自身の原画による)になっています。

 右は映画「ノストラダムスの大予言」のサウンドトラック(東宝、1974)。原作も映画もトンデモな代物で、良かったのは由美かおるさんのヌードシーン(ほんのちょっと!)と音楽だけでした。

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吾妻ひでおに花束を …2016年5月7日

 黒吉は古くからのアズマニア。何しろ初期作品「荒野の純喫茶」の掲載誌のスクラップを後生大事にしまってあるくらい。ですから新刊はチェックしていたはずなのに「ワンダー・AZUMA HIDEO・ランド」を見逃してしまい、あわてて注文(予約特典がっ!)。

 いやー懐かしい!初期作や同人誌掲載作ほか単行本未収録の貴重な作品がたくさん。一枚もののイラストなんかも細かく拾ってあって、ひでお愛にあふれた一冊です。

 考えてみれば、このような作品集を編んでもらえるマンガ家は、作者冥利に尽きるのではないでしょうか。この種の断片的な作品を集めた本は、大家にも以外とありません。すぐに思い当たるのは、ふくやまけいこさんくらい。よほど熱烈なファンやコレクター、それに理解のある版元がなければ実現できない企画だと思います。

 吾妻さんの作品は、美少女を核として、シュールでSFな独自の幻想世界を構築しています。吾妻さんが活動を開始した時代には、そのようなマンガを掲載する雑誌はありませんでした。ですから苦労して少しずつ市場を開拓しながら、時にはエロ雑誌の注文にも応じざるを得なかったのです。今日のマンガの多様性は、吾妻さんや(当時は)マイナーなマンガ家の皆さんの努力があってこそ花開いたといえるでしょう。

 さて、黒吉の本棚にある吾妻本の中で、ちょっと珍しいのでは?と思われるものを二、三紹介しましょう。コレクターの方には笑われるかもしれませんが…

 まず「PAPER NIGHT(ペーパーナイト)」(1981、東京三世社刊)。これは季刊の雑誌「少年/少女SFマンガ競作大全集」の増刊号。なんと全ページ、切り抜いて遊ぶタイプのちょっとエッチなパズル本です。絵を吾妻さんが担当しているので、一種の吾妻画集?本の性格上、残っているものが少ないかも知れません。ちなみに黒吉は2冊買って、1冊は切り抜いて遊んじゃいました。

 次は「LET'S GO WITH HASTY」(1973、早稲田外語)。奥付に「シニア版英語会話」とあるように、英会話のテキスト雑誌です。うさぎのヘイスティと人間のガールフレンド(フランキー)の会話で進んでいきます。裏表紙の見返しに同名の英会話教材(カセットテープ付き)の広告が出ていますが、この雑誌はその教材の冊子に記事を追加して、独立させたものと思われます。
 表紙やさし絵もさることながら、合い間にヘイスティやタバコおばけのマンガが載っているのが楽しくて、珍蔵しています。3号で終刊しましたが、教材は6巻あるようなので、後半のさし絵は教材で見るしかない!こちらはまさにレア・アイテムでしょう。

 最後は「吾妻ひでおCD-ROM WORLD」(スタジオ・エフェックス、月刊アスキー編集部編 1995、アスキー)。CD-ROM付きの本としては比較的初期のものです。Windows3.1及びWindows95対応。本の方には短編が3つ。CDの方には「純文学シリーズ」「シベール作品集」ほか壁紙などが収録されています。同人誌「シベール」掲載作が公刊されたのはこれが初。

 なお、黒吉のマイ・フェイバリットは「ミニティー夜夢(やむ)」(1984秋田書店)です。学校を求めて異世界をさまよう女子高生の話。5~6ページのエピソード14話で構成されています。毎回登場するけったいな生物(住民)とのやりとりが絶妙。ちょっと哀感のある幕切れも余韻を残します。この不条理ながらも妙に居心地のよさそうな世界は、他のだれにも真似できません。


(注)

・「荒野の純喫茶」は週刊少年チャンピオン1970年8月3日号及び8月10日号に掲載。後の吾妻マンガの先駆けといえる不条理ギャグマンガ。単行本「みだれモコ」(1977、双葉社パワァコミックス。後に同社の100てんランドコミックスで再刊)所収。ちなみに「みだれモコ」は後の名作「スクラップ学園」の原型作品。

・スクラップは他に「スクラップ学園」(駄ジャレじゃない)全話などを所蔵。ひょっとしてお宝?

・「ワンダー・AZUMA HIDEO・ランド」は復刊ドットコム刊。「2」も出ました。

ふくやまけいこさんは何々で知られるマンガ家…と書こうとして「何々」が思いつかない。キャリアのある大ベテランで、同業者や各種クリエイター、SFマニアなどに熱心なファンが大勢います。にもかかわらず広く知られた代表作とよべるものがない!どこかほんわかとした絵柄と、同様に暖かなストーリー。でも、根底には特濃のおたくマインドが脈々と流れています。

・エロ雑誌…といっても馬鹿にしてはいけません。たいていの場合、版元はホットなシーンさえあれば、あとは何をやってもOKというようなゆるい方針だったので、実験的な作品やユニークなコラムを載せることが可能だったのです。1980年代に大塚英志さんが「まんがブリッコ」というエロマンガ誌を、藤原カムイ等気鋭の新人の活躍の場に改造しちゃったのは有名な話。

・季刊「少年/少女SFマンガ競作大全集」は伝説の「マンガ奇想天外」のライバル誌。当初は再録専門誌でしたが、次第にオリジナル中心にシフト。1978~85年に増刊号を含め32冊を刊行(初期の「少女マンガミステリー競作大全集」を含めれば33冊)。1985年に月刊「WHAT」にリニューアルするも翌年第12号で終刊。

・タバコおばけは吾妻マンガ初期のマスコット的なキャラクター。「HASTY」2号のマンガに「タバコおばけは気のいいおばけ。タバコをのんで、タバコをたべて、しまいにゃタバコで身をおとす」とあります。

・3号で終刊…「4号はまだか?」と版元に送ったハガキが宛先不明で返ってきました。推して知るべし。

・Windows3.1 … 一般に普及した初のWindows(1993年発売)。しかし不安定で、アプリケーションがOSを道連れにダウンすることが頻繁に。その度に泣く泣く十数枚のフロッピーディスクから再インストール。え、フロッピーディスクとは何かって?ああ時代は変わったのね(遠い目)。

 

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ヴァンパイア小説総ざらえ その2 1970年代 …2016年5月3日

 19世紀の元祖から、いきなり1970年代でまことに申し訳ありません。でも、この間に書かれた吸血鬼小説にほとんど訳書がないのですよ。ひょっとすると原書も出ていない?

 目ぼしいところでは、ドイツのH・H・エーヴェルス著「吸血鬼」という大作があることはあるけれど、うーん何というか…。吸血鬼伝承の根底にある秘密が明らかになる話なんですが、一般的な意味での怪奇小説ではありません。どう書いてもネタバレしそうなので、歯切れが悪くてごめんなさい。

 ほかに有名どころではリチャード・マシスンの「吸血鬼」(別名「地球最後の男」「アイ・アム・レジェンド」)があります。こちらは、吸血鬼と人間の立場が逆転するというものすごい変化球。名作だけど、ジャンル的にはSFなので、これもパス。

 となると本当にない、全然ない!黒吉が思うに、1950年代までの吸血鬼のイメージといえば、「ノスフェラトゥ」かベラ・ルゴシ主演の「魔人ドラキュラ」、そしてそれ以降はクリストファー・リー主演の「吸血鬼ドラキュラ」。つまり吸血鬼イコールB級ホラーという図式ができていて、作家としても題材に取り上げることが(商売的に)難しかったのではないかと考えたりします。さて、真相や如何に?


呪われた町」(上・下)スティーヴン・キング著 Salem's Lot(1975)
 パシフィカ(1978)、後に集英社文庫
 泣く子も黙るステキンのデビュー2作目。よみがえった吸血鬼により崩壊してゆく田舎町。伝統的な(怖い)吸血鬼物語の集大成的名作です。この一作によって、古めかしいと思われていた伝説の怪物が、リアルな現代社会に華々しい復活を遂げたということで、キングと次のアン・ライスは吸血鬼小説の中興の祖といってよいでしょう。


夜明けのヴァンパイアアン・ライス著 Interview with the Vampire(1976)
 早川書房(1981)、後にハヤカワ文庫NV
 美貌の吸血鬼レスタトの遍歴を描く一大絵巻「ヴァンパイア・クロニクルズ」の第1巻。本作ではレスタトは脇役で、彼の想い人ルイ(男)がインタヴューに答えて、吸血鬼としての半生を語ります。幼体の吸血鬼クロウディアの運命が衝撃的。背徳の美とでもいうべきものを絢爛豪華に描く筆致は比類がありません。映画「インタヴュー・ウイズ・ヴァンパイア」の原作。

 ついでに続巻の紹介もしておきましょう。

第2巻「ヴァンパイア・レスタト」(上・下)The Vampire Lestat(1985)
 扶桑社ミステリー(1994)
 ロック界のスーパースターとなったレスタトは、パリの吸血鬼のリーダー、アルマンと知り合い、一族のルーツを探る旅に出ます。

第3巻「呪われし者の女王」(上・下)The Queen of the Damned(1988)
 扶桑社ミステリー(1995)
 すべての吸血鬼の「母」アカシャが覚醒し、世界をヴァンパイア化しようとします。その前に立ちふさがるレスタトと仲間たち。ヴァンパイア誕生の秘密が明らかに。

第4巻「肉体泥棒の罠」(上・下)The Tale of the Body Thief(1992)
 扶桑社ミステリー(1996)
 レスタトは人間に戻ろうとして、自らを肉体泥棒と称する怪しげな男と取引をしますが…。

第5巻「悪魔メムノック」(上・下)Memnoch the Devil(1995)
 扶桑社ミステリー(1997)
 神と闘う堕天使メムノックとともにレスタトは天国へ。そしてついに神と衝撃の対面!悪魔が語る世界の真相とは?アン・ライス神曲地獄編。

第6巻「美青年アルマンの遍歴」(上・下)The Vampire Armand(1998)
 扶桑社ミステリー(2002)
 パリの吸血鬼界に君臨するアルマンが語る、若き日の破滅と再生の物語。舞台は15世紀のキエフからヴェネツィアへ。

外伝1「パンドラ、真紅の夢」Pandora(1998)
 扶桑社ミステリー(2002)
 作者が「ノヴェラ」と呼ぶ外伝の1作目。アルマンの師マリウスをかつて愛した、美女パンドラの物語。舞台は帝政ローマ

外伝2「呪われた天使、ヴィットーリオ」Vittorio the Vampire(1999)
 扶桑社ミステリー(2003)
 ノヴェラ2作目。ヴァンパイア集団に一族を皆殺しにされた少年は、復讐を誓い、自らも吸血鬼に。ルネサンス期イタリアの物語。

 翻訳があるのは以上。本国ではすでに第13巻まで出ているのですが…。

 それまでの吸血鬼ものでは、ヴァンパイアはいわば不可知の存在で、それが襲ってくるところに恐怖が生じたわけです。それに対してアン・ライスは吸血鬼の側から物語を描くという、新しいタイプのヴァンパイア小説を生み出しました。以後、このタイプが主流になり、現在にいたっています。

 でも、吸血鬼が内面を持つということはもろ刃の剣で、ヴァンパイアはもはや不可知の怪物でなく、単に変わった属性を持つ人間に堕落して、もとい変化してしまいました。ホラーな吸血鬼小説を愛する黒吉にとってはさびしい限りです。


シャーロック・ホームズ対ドラキュラ あるいは血まみれ伯爵の冒険」ジョン・H・ワトスン著 ローレン・D・エスルマン編 Sherloch Holmes vs.Dracula or the Adventure of the Sanguinary(1978)
 河出文庫(1992)
 ロンドンに上陸した吸血鬼の魔手はついにワトスンの妻にまで。ヴァン・ヘルシングの勝利の陰には名探偵の助力が。どちらの原作も尊重した好著。


(注)

・H・H・エーヴェルス著「吸血鬼」Der Vampir(1920)は創土社1976年刊。

リチャード・マシスン著「吸血鬼」I am Legend(1954)は早川書房(ハヤカワ・ファンタジイ)1958年刊。現行版は「アイ・アム・レジェンド」ハヤカワ文庫NV。

・映画「ノスフェラトゥ」Nosferatu は1922年のドイツ映画(サイレント)。表現主義映画の代表作として知られる。1978年に西ドイツでリメイクされた。

・映画「魔人ドラキュラ」Dracula は米ユニヴァーサル作品。1931年公開。

・映画「吸血鬼ドラキュラ」(Horror of) Dracula は英ハマー・フィルム・プロダクション制作。1958年公開。

※「夜明けのヴァンパイア」と萩尾望都さんのマンガ「ポーの一族」の類似性を指摘される方もおられるようですが、前者の原著は1976年刊、後者の第1巻は1974年刊。ということで萩尾さんの勝ちって、そういう問題じゃないよね。ただアン・ライスは1973年頃にはもう書き上げていたので、たまたま、同時期に似たような発想をされたということでしょう。

 

ヴァンパイア小説総ざらえ その1 …2016年4月29日

 黒吉はホラーも大好きなので、三大怪奇スターの一角たる吸血鬼についての本が出ると、ついつい買ってしまいます。映画やTVシリーズなどもできるだけチェックしているのですが、昨今は困ったことにロマンスがらみのが大はやり。

 たとえば、初恋の相手は吸血鬼(「トワイライト」)。吸血鬼兄弟と三角関係(「ヴァンパイア・ダイアリーズ」)。人の血を吸わない(人工血液で生きてる!)吸血鬼と恋におちるウェイトレス(「トゥルー・ブラッド」)等々。

 こらぁ、吸血鬼っつうのは元来悪霊なんだよ!どんなに男前だろうがべっぴんだろうが、生ける屍、ゾンビと五十歩百歩なんだよ。大地が受け入れることを拒んだ呪われた死者なんだよー!はぁはぁ…と、じじーがいくら叫んだところでだあれも聞いちゃいない。

 いつ頃からこうなっちゃったのか?起源としては、真っ先にトム・クルーズとブラピが主演した「インタヴュー・ウイズ・ヴァンパイア」が思いうかびますが、ひょっとするとカトリーヌ・ドヌーヴデヴィッド・ボウイ(先日お亡くなりに。合掌)主演の「ハンガー」かも知れません。でも、直接のきっかけはTVシリーズ「バフィ~恋する十字架~」じゃないかと黒吉はにらんでいます。

 いずれにせよ、こんな軟派な吸血鬼がはびこっておっては、元祖ヴラド・ツェペシュ公に申し訳が立たん!というわけで、今宵は本格派?の吸血鬼本をご紹介しましょう。

 とは言うものの、本棚をざっと見ただけでも結構な数の吸血鬼本が。こりゃ自分の首をしめるようなテーマを選んじゃったかも。貧血にならなけりゃよいが…とぼやきつつ、まずは元祖から。

 

「吸血鬼」ジョン・ポリドリ著 The Vampyre(1819)
 バイロンの主治医だった著者が、詩人の未完の物語に想を得て書いたため「バイロンの吸血鬼」と称されたことも。はっきりした吸血の描写こそないけれど、謎めいた魔人がもたらす恐怖感を巧みに描いて、まぎれもなく吸血鬼小説の始祖といえます。
 邦訳にして二十数ページほどの短編で、アンソロジー「怪奇幻想の文学第1巻 真紅の法悦」(1969 新人物往来社)所収。このシリーズ(全7巻)は紀田順一郎さんと荒俣宏さんの編集。創元推理文庫の「怪奇小説傑作集」(全5巻)と並ぶ、怪奇小説愛好家必備の基本図書。

 

「吸血鬼カーミラ」ジョセフ・シェリダン・レ・ファニュ著 Carmilla(1872)
 世界恐怖小説全集第1巻(1958 東京創元社)、後に創元推理文庫
 これも短編で、近代吸血鬼物語のもうひとつの原型になった古典。恐怖小説としても一流だけど、美少女吸血鬼が若い娘を襲うという、百合的な妖しさも魅力。いかにもヴィクトリア朝の作家らしい滋味あふれる語り口で、物語を読む喜びを存分に味わうことができます。
 ところで吸血鬼が別名を使う場合、必ずアナグラム(綴り替え)で名乗るというお約束は、どうもこの本が起源らしい(蛇足)。

(追記)先日、創元推理文庫が実に46年ぶりにレ・ファニュの第二短編集を刊行してくれました。「ドラゴン・ヴォランの部屋」(千葉康樹さんの編・訳による日本オリジナルの傑作選です)。ただ、ただ涙!

 

「吸血鬼ドラキュラ」ブラム・ストーカー著 Dracula(1897)
 創元推理文庫の新版(1971)が本邦初の完訳。「カーミラ」と同じく、平井呈一先生の鏤骨の名訳です。
 いわずと知れた大古典。吸血鬼の基本型を完成したという意味で、この一冊がなければ今日の吸血鬼物語の隆盛はなかったでしょう。本文は手紙と日記で構成されており、いわゆる書簡体小説の名作になっています。120年も昔の作品ですが、プロットといい、見せ場といい、面白い小説とはかくあるべしという、まさに珠玉の逸品。

 

(注)
・三大怪奇スター…ホラー映画のクラシカルな定番モンスターといえば、吸血鬼に狼男そしてフランケンシュタイン(の怪物)。ミイラ怪人と大アマゾンの半魚人を加えれば五大スター。

・トワイライト Twilight …米国の作家ステファニー・メイヤーのヤングアダルト向け小説全4巻(2005~8)邦訳はヴィレッジブックス刊(文庫版、全13冊)。映画化作品は全5作(2008~12)。

・ヴァンパイア・ダイアリーズ The Vampire Diaries …米国のTVシリーズ。7シーズン155話(2009~16)。

・トゥルー・ブラッド True Blood …米国のTVシリーズ。7シーズン80話(2008~14)。ちなみに「トゥルー・ブラッド」というのは作中の人工血液の商品名。日本人の開発だそうです。

・インタヴュー・ウイズ・ヴァンパイア Interview with the Vampire(1994)は米国ワーナー映画。原作については後ほど。

・ハンガー The Hunger(1983)は米国MGM映画。原作本については、こちらも後ほど。

・バフィ~恋する十字架~ Buffy the Vampire Slayer …米国のTVシリーズ。映画「バッフィ・ザ・バンパイアキラーBuffy the Vampire Slayer(1992)の続編として制作。7シーズン144話(1997~2003)。主演のサラ・ミシェル・ゲラーはこの作品で一躍人気女優に。

ヴラド・ツェペシュ公は「ドラキュラ」の名で知られる、15世紀ワラキア公国(現ルーマニア)の封建領主。オスマン・トルコ軍を撃退した救国の英雄です。戦国武将にありがちな勇猛果敢、残忍無比という性格ゆえに、敵からは悪魔と呼ばれました。吸血鬼にしちゃったのは、19世紀アイルランドの作家ブラム・ストーカー。あの世で公に出会って、ひどい目にあってなければよいのですが…。

 

こんな雑誌があった その1 文學季刊「牧神」 マイナス3号ってまじっすか? …2016年4月20日

 新しい雑誌を出すときは創刊号(第1号)から始めるのが普通。ところが何を思ってかゼロ号とか創刊準備号とかで始める、へそ曲がりな版元がたまにあります(最近だと「特撮ゼロ」)。メジャーな雑誌なら見本としての創刊準備号をつくって、発売前に取次や書店に配布し、意見を集めることがあります(当然、非売品で正式な号数には含まれません)。

 ま、ここまでならよくある話で、取りたてて珍しいことではありません。でも、マイナス号となれば話は別です。それもマイナス3号!

 そんな酔狂な創刊をしたのは「牧神」という1970年代の文芸誌。海外文学愛好家向けの内容で、いわゆるハイブローな読者を想定していたようです。当初は幻想文学寄りの特集が多かったので、貧乏学生の黒吉も無理して購読していました。

 ところが何たること、9号で当時大いにもてはやされたエリカ・ジョングなんぞを特集したじゃありませんか。日和(ひよ)ったなぁ!と怒った黒吉は次の10号で訣別したのでありました。同誌はせっかくの方針転換も甲斐がなかったとみえて、結局12号で終刊してしまいました。

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 問題のマイナス3号の現物はこんな具合。となりの「SFマガジン」(A5判)と比べると小さい、しかも薄い(64ページ)。初めて見たときは出版社のPR誌と勘違いして「えっ、有料っすか?」と恥をかいちまいましたぜ。でも珍しくアーサー・マッケンの特集だし…と迷った末に購入。マイナス2号(ロルカ特集)も勢いで買ってしまい、次号を待っていましたが、予定時期になっても見当たらない。

 1号を待たずに休刊か?とレジ横を見るとありました!なんとマイナス1号は無料の図書目録だったのです。それまでの号は小さいながらもちゃんと厚手の表紙がついていましたが、これは普通紙を綴じただけのペラペラ。見逃してマイナス1号は存在しないと思った人もいるのではないでしょうか。
 次はひょっとしてゼロ号か、と期待しましたが創刊号でした、ちょっと残念。

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 さて、肝心の内容ですが、参考に創刊号の目次を載せておきます。執筆陣の豪華さはため息もので、同じテーマで作っても、これを超えるものは難しいと思われます。以下、4号までは幻想文学路線でした。

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 5号から背表紙の色がそれまでの赤から紫に変わるとともに、内容が神秘主義方面にシフト。さらに背が緑になった問題の9号からは、全然別の方向に…。全号のデータを記しておきます。

-3号(1973.7) 特集1:アリス&キャロル 特集2:A・マッケン=妖魔の世界
-2号(1974.6) 特集:フェデリコ・ガルシーア・ロルカ
-1号(不明) 図書目録74年夏
創刊号(1975.1) 特集:ゴシック・ロマンス 暗黒小説の系譜
 2号(1975.5) 特集:不思議な童話の世界
 3号(1975.8) 特集:幽霊奇譚
 4号(1975.10) 特集:海洋冒険小説
 5号(1976.1) 特集:ウィリアム・ブレイク 予言と神秘の書
 6号(1976.7) 特集:ウィリアム・ブレイク 無垢(イノセンス)の歌
 7号(1976.11) 特集:神秘主義について
 8号(1977.1) 特集:ノヴァーリス 夜の想像力
 9号(1977.6) 特集:崩壊する女らしさの神話 アメリカ女性作家を通して
10号(1977.9) 特集:SFファンタジーの世界 ル・グィンの神話と幻想
11号(1977.?) 特集:都市の肖像 (副題不明)
12号(1978.?) 特集:人間の棲家 建物の生理学
※3号と11号に「臨時増刊」の表記あり。11号と12号は現物が手元にないのですみません。

 もはや忘れられた雑誌かと思いますが、ウィリアム・ブレイクの2号連続特集など、幻想文学ファンならずとも珍重するべき、珠玉のような文芸誌です。


(注)
・季刊「牧神」は牧神社出版発行。牧神社出版は、やはり高踏的な文芸誌「思潮」(思潮社)を編集していた菅原孝雄(貴緒)さんが興した出版社。「アーサー・マッケン作品集成」(全6巻)「シャルル・ノディエ選集」(全5巻)「日影丈吉未刊短篇集成」(全4巻)など幻想文学方面の出版で足跡を残すも短命に終わりました。

・「特撮ゼロ」はアオ・パブリッシングが出している季刊の情報・評論誌。珍しく地方出版(兵庫県尼崎市)の雑誌です。ヴィジュアルに頼らない文字中心の特撮誌としては、他に不定期の「特撮秘宝」(洋泉社)がありますが、ともどもにがんばっていただきたいと黒吉は応援していますよ。

・「小さい、薄い」…創刊号以降はA5判平綴じ、つまり「SFマガジン」なんかと同じ体裁になりました。

・出版社のPR誌は岩波書店の「図書」が老舗。たいてい書店が無料で配布しているけど、内容は下手な一般誌より充実。わが家では置かれている場所にちなんで「トイレ本」と呼ばれています。作っている人たちごめんよー!

エリカ・ジョング(1942-)は米国の作家。夫を捨てて放浪する女性を描いた小説「飛ぶのが怖い」 Fear of Flying (1973) がわが国でもベストセラーに。フェミニズム小説のように言われるけど少し違うような…。現行の邦訳は河出文庫

・アーサー・マッケン(1863-1947)は英国の作家。M・R・ジェイムズ、H・P・ラヴクラフト、アルジャノン・ブラックウッドとともに近代怪奇小説の四天王と呼ばれます。なお「アーサー・マッケン作品集成」は2014~15年に沖積舎から再刊されました。