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ちょっと休憩 ~ガラケー砦の黒吉ついに陥落!~

 ふう、やっと旧ブログの記事の移行が完了しました。ちょいちょいとコピーすればいいので楽勝、楽勝と油断していたら、結構たいへん。読み直すと、アラが目に付くし、データもアップデートしなくっちゃ…という訳で、意外と時間がかかってしまいました。その割にちっとも良くなった気がしないのは我ながら情けないのですが、今後ともよろしくお願いします。

 

 閑話休題、この歳でやっとスマホ・デビューしました。「どいつもこいつもスマホの奴隷になり下がりおってからに!Wi-Fiタブレットガラケーがあれば、用は足りるのじゃ!」などと常々ほざいていた黒吉ですが、ガラケー向けのサービスが次々に廃止され、スマホ向けのサービスが当たり前になるに及んで、ついに白旗をあげた格好です。

 長年お世話になった三太郎(au)に別れを告げ、格安SIМのふてにゃん(Y!Mobile)に移行しました。端末はASUSの Zenfone3 laser。家電量販店のセールとキャッシュバックのおかげで、端末代、МNP(電話番号移行)手数料、登録事務手数料など一切合切が1万円ちょっとですんでしまい、大助かり(その代わり、初期設定やデータの移行はすべて自分でする破目に)。

 一番安い料金プラン(月2,980円、初めの2年間は1,980円)なので、毎月のデータ量1GB(初めの2年間は2GB)以上で回線速度制限がかかりますが、黒吉の立ち回り先にはたいていソフトバンクのWi-Fiスポットがあるので、まったく問題なし。きわめて快適です。

 早速、初音ミクさんのPVを試してみると、1080p、60fpsの高画質動画が美しくスムーズに再生できます。3DCGを使うゲーム(デレステなど)をやらない限りはまず不足のない性能です。不満があるとすれば、ガラケーにくらべ、バッテリーの持ちがよくないこと、防水でないことくらいでしょうか。

 というわけで、必死でガラケーにしがみついていた黒吉は、あっという間に変節してしまったのでありました。ちゃんちゃん!


(注)

・格安SIМ…スマホガラケーには、契約者情報を書き込んだ特別のメモリ・カードが装着されています。それがSIМカードと呼ばれるもので、これがないとスマホガラケーは電話として使うことができません。

 キャリア(携帯電話会社)はSIMを端末(スマホガラケー本体)込みで販売し、端末代金を分割して毎月の通信料に上乗せ課金します。しかし、2年間で端末代金を回収し終えた後も、毎月の課金が安くなることはありません(怒)。

 それに対し、格安SIMの事業者(たいていはキャリアから回線を借りているMVNOと呼ばれる業者です)は、原則として契約者にSIMカードのみを販売し、通信料だけを毎月課金します。もともと端末代金が上乗せされていないうえ、実店舗を持たないなど販売コストをかけていないこともあって、キャリアの課金にくらべ割安にできるというわけです(ただし、端末は契約者自身が別に用意する必要があります)。

 

・Zenfone3 laser …いわゆるミッド・レンジ(中級)の端末ですが、実売3万円ほどで、価格対性能は抜群。これで黒吉のモバイル・パソコンもタブレットスマホもすべてASUSに。お前は回し者か?

 ・データの移行…電話帳の移行が結構面倒。ガラケーの電話帳をSDカードに移したはよいが、どのフォルダに格納されたのか大捜索。やっと見つけたファイルを GmailGoogleのフリーメールシステム)に移すのがまた一苦労。やれやれ!

 ・Wi-Fiスポット… Y!Mobile はMVNOでなくソフトバンクの別動隊なので、数の多さで優れる同社のWi-Fiスポットが利用できるのです。

 ・1080p、60fps… 解像度 1920x1080ドット(フル・ハイビジョン)の画像を1秒間に60回書き替えている動画。たいていのパソコンではスムーズに再生できないほど高画質。おかげで黒吉はモバイル・パソコンを、画像処理専用のプロセッサ(GPU)内蔵のものに買い替える破目に(泣)。

 ・デレステ…「アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ」の略称。バンダイナムコエンターテインメントからスマホタブレット用に配信されている音楽ゲームアプリ。高解像度で遊ぶには、非常にハイ・スペックの端末が必要。

 

こんな雑誌があった その2 ある雑誌の一生 「Peke」と「ComicAgain」(前編) …2016年8月13日

 ある雑誌の創刊から終刊までを確実に調べることは容易ではありません。まず、いつ創刊したか。先に紹介した「牧神」のようにマイナス号からスタートなどという反則技はめったにありませんが、それでも第1号の前に創刊準備号やゼロ号があったりするのは、ままあること。

 そうでなくても、創刊号イコール第1号でないケースが結構あります。それは次のような事情によります。あたらしい雑誌を全国の書店に置いてもらうために、版元は取次会社(本の流通業者)から「雑誌コード」という番号(雑誌の商品番号)をもらう必要があります。そのためには取次に対して、その雑誌の商品価値を販売実績でアピールするのが早道です。

 そのために新雑誌の第1号を既存の(雑誌コードをすでに持っている)雑誌の増刊号として、観測気球的に発売するという裏技?を駆使するわけです。ですから第3号や第4号あたりで唐突に「創刊号」の文字が表紙に出たりするのは、いわば新雑誌が一人前になったよ(雑誌コードをもらった)という宣言なのです。

 このようなケースでは、創刊号より前の号つまり増刊号扱いの分はどちらの雑誌にカウントするべきか、という問題が生じます。形式的には親雑誌に属することになりますが、体裁や内容から上記のような事情がはっきり見てとれる場合には、増刊号といえども別の雑誌とみなすのが適当かと思われます。

 また、このような増刊号があったりすると親雑誌の号数(表紙や裏表紙の隅っこにごくごく小さな字で書いてある「第〇巻第〇号」という表記)があてにならなくなる場合があります。買い漏らしなく揃えたはずなのに号数が抜けている!などというのはそういう事情もあります(もちろん版元の付番ミスもあったりするので油断がなりません)。

 ついでに申しますと、増刊号と似た「別冊」というのが出ることがあります。全国出版協会のWebサイトによれば『「別冊」は本誌の+α的内容のもので、「増刊」は本誌とあまり関連してない内容のもの』という説明がありますが、実際には明確な区別がないらしいです。別冊を増刊号と同じく、本誌の一部とみなすべきかどうかは実に悩ましい問題です。おまけに別冊の名を冠した雑誌(「別冊太陽」「別冊マーガレット」など)まであってややこしいこと限りなし。

 閑話休題、さて終刊を確認するのはもっと大変。最近の雑誌についてはWebなどで調べればわかるのですが、昔の雑誌については現物に当たるしかない場合も多いのです。表紙に「お別れ号」とあったり、どこかに「休刊のお知らせ」が載っていればよいのですが、突然終刊しちゃう場合も多々あるというより、そっちの方が多かったりします。次号予告が載っているけど、その次号は永久に出なかったりするわけです。

 現物にあたるといっても、図書館に収蔵されているのはメジャーな雑誌ばかり。とくにマンガ雑誌やサブカルチャー系などは図書館にはまずないので、個人のコレクションが頼りです。あとは各ジャンルに特化した古書店以外に情報源はないと思います。

 やっとのことで終刊を確認したからといって安心してはいけません。マンガ雑誌などは誌名を変えて新装開店というというのが結構ありますので…。というわけで雑誌探求の道は限りなくけわしいのです。

 と、ここまでが前フリ!。長すぎてバテたので、以下次号(って雑誌じゃないってば)。


(注)

・終刊…たいていの場合「廃刊」なのですが、出版業界ではこういう身もふたもない言い方を避けて「休刊」という言葉を使います。

・「牧神」については、当ブログの過去記事「こんな雑誌があった その1 文學季刊「牧神」 マイナス3号ってまじっすか?」を参照。

・雑誌コード…雑誌の裏表紙の一番下に「雑誌 99999-99」という7桁の数字で記載されています。コミック本も多くは雑誌コードを持つ、いわゆる「雑誌扱い」の商品です。雑誌でも不定期刊のものや、長期間店頭に置きたいものなどは「ISBNコード」を持つ「書籍扱い」になっています。

・取次会社…雑誌コードの事務をおこなっているのは大手取次会社の「トーハン」。

・増刊号…臨時増刊号とも。定期的に発行される通常号以外に、イレギュラーに発行される号。マンガ雑誌などは、いつどんな増刊号が発行されたのか突き止めるだけで一苦労。

・観測気球…極端なケースですが、徳間書店から出ていた月刊「SFアドベンチャー」という小説誌が、唐突にSFとはまったく無関係のアウトドアスポーツの増刊号を出したことがあります。当然のことながら、コレクターからたいてい無視されています。

・第〇巻第〇号…通巻〇〇号と表記する場合もあります(月刊「本の雑誌」など)。

・増刊と別冊…例えば月刊「本の雑誌」(本の雑誌社)では、毎年恒例の「本屋大賞」と「おすすめ文庫王国」を増刊、「古本の雑誌」や「SF本の雑誌」などのワンテーマ特集を別冊としています。

全国出版協会のWebサイト…出版科学研究所のコラム『既存の雑誌が「創刊」とは、これ如何に』(2007年1月11日)より。

・図書館にはまずない…国立国会図書館ならあると思うのが大間違い。法定の納本義務をきちんと守る版元ばかりではありません。マンガ(特に成年マンガ)、アニメ、ゲームなどの分野の納本漏れは、つとに指摘されています。

・ジャンルに特化した古書店…たとえばマンガなら「まんだらけ」など。まんだらけの大部な目録「まんだらけZENBU」(1998年創刊、最新号は本年1月の79号)は非常に資料的価値が高いのですが、とてつもなく目の毒なので黒吉はあえて読んでません。

すごいぞ!「シン・ゴジラ」(少しネタバレ注意) …2016年8月2日

 シンゴジ早速観てきました。いや~良かった!久々に本物の怪獣映画を観たという満足感があります。

 驚いたのはゴジラの形態がどんどん変わること。最初は別の新怪獣かと思っちゃいましたぜ。何でも1世代それも単一の個体で進化を繰り返す「完全生物」らしいです。劇中ではさらなる進化にも言及されていて、有翼形態もあり得るようです。

 さらに驚いたのは完全な群像劇だということ。主人公はいちおう矢口内閣官房副長官ですが、実際には内閣とか、自衛隊、それに緊急対策チームが主役で、恋愛や親子関係などの個人的な事情が入り込む余地はありません。そういう意味ではわが国でしかつくれなかった怪獣映画ではないでしょうか。ハリウッドの連中に見せたらびっくりするだろうな。

 というわけで、一種のポリティカル・フィクションになっており、テーマは有事における国防と危機管理といってよいと思います。未曽有の大災害?に直面した政府の対応もリアルで、日本国民としてはいろいろと身につまされます。ついに東京での熱核兵器の使用を容認させられるに至り、わが国の置かれている立場を眼前につきつけられたような気がして、思わず背筋が寒くなりました。

 それにしてもゴジラ強すぎ。放射熱線は史上最強(最凶)で、都心3区はほぼ壊滅状態。ほとんど巨神兵並み(そうか庵野監督だった!)。背中からハリネズミのように光線を発射してB2(米軍の爆撃機)を撃墜する場面には「拡散メガ粒子砲か、イデオンか?」と突っ込みを入れちゃいました。

 もちろん強いだけじゃなく、恐怖感も半端じゃありません。とくに怖いのは目。人間だと完全にあちらへ行っちゃってる目です。過去作、たとえばGМKゴジラ(白眼ゴジラ)には明らかに人間に対する悪意(敵意)が見られましたが、今回のゴジラにはそれがありません。何かわからない圧倒的な力が、突然襲来して人はなすすべもなし。人がもっている原初的な恐怖心に訴えるものがあります。

 最終決戦は伊福部マーチにのって、いやが上にも燃える展開です。場所が東京駅になっているのは、そういう意図があったのかと思わずひざを打ちました。最近の映画に不足がちなカタルシス(これ大事)があって、怪獣映画はこうでなくっちゃと満面の笑みで映画館をあとにした黒吉でありました。

 でも、ラストシーンにはどんな意味が?とちょっと首をひねっています。


(注)

・完全生物…ゲノム・サイズは人間の8倍だとか。そういえば元祖「エイリアン」も完全生物だと言ってましたな。どこが完全?

・有翼形態…山田正紀さんの先駆的怪獣小説「未来獣ヴァイブ」(朝日ソノラマ、2005年、元版は1985年)を連想しました。」

・緊急対策チーム…名称は「巨大不明生物特災害対策本部(巨災対)」ゴジラの細胞や行動などを分析して、対抗策を研究するプロジェクト・チーム。一匹狼、鼻つまみ、おたくなど問題児の寄り合い所帯(笑)。

巨神兵…「風の谷のナウシカ」の方じゃなくて、「巨神兵東京に現わる」(2012年「館長庵野秀明特撮博物館」東京展で初上映。後「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」のソフトに収録)の方ね。

・B2スピリットはノースロップ・グラマンが製造。1989年に1号機がロールアウト。いわゆるステルス機で、真っ黒な全翼機(胴体や尾翼のない飛行機)。

・メガ粒子砲…「機動戦士ガンダム」シリーズに出てくる光線兵器。拡散メガ粒子砲は複数の敵を同時に攻撃できる。

イデオン…TVアニメ「伝説巨人イデオン」(1980)の主役メカ。

・GMKゴジラ…「ゴジラ モスラ キングギドラ大怪獣総攻撃」(2001年)のゴジラ金子修介監督作品なので「金子ゴジラ」、また「劇場版 とっとこハム太郎 ハムハムランド大冒険」との併映だったので「ハムゴジ」とも(笑)。

・伊福部マーチ…ゴジラ映画といえば伊福部昭さんの名曲抜きには語れません。今回の映画ではオリジナルのモノラル音源をそのまま使用しているとのことです。

・ラストシーン…尾のシルエットに見える複数の人型は、ゴジラの第5形態が分離しようとして、間に合わず凍結されたものとする見方が多いようです。

 

夏はVRとWindowsでくらくら …2016年7月24日

 「暑い日が続くこの場所で~」などと歌いながら歩いていると、路面の照り返しで頭がくらくらするような時節ですが、いかがお過ごしでしょうか。思わずドトールに逃げ込んで、アイスコーヒーを飲みながら「VRビジネスの衝撃」なる本を読んでいますと「ミクミク握手」というシステムについての記述がありました。

 VRつまりヴァーチャル・リアリティのシステムを使って、初音ミク、それも黒吉お気に入りのTda式ミクと握手のできるデモンストレーションだというじゃありませんか!ヘッドマウントディスプレイをかぶって、右手に握ったスティックから振動が伝わる仕組みですが、現実感は半端じゃないそうです。

 やった!これでヴァーチャル・アイドル最大の難関?握手会の問題もクリアできる目途がついた。生身のアイドルの死刑宣告完了だぁ!と狂喜する黒吉。ああっ、石を投げるなっつーに。

 冗談はさておき、これまで「ギークのおもちゃ」扱いされていたVRは、ようやっと普及段階にこぎつけました。わが国では、ソニーから10月に出る「PS VR」が先駆けになる模様です。対応ソフトの中には「初音ミクVRフューチャーライブ」(SEGA)というのが同時発売予定に上がっています。

 ううっ、気になる!しかし「PS VR」だけで4万5千円(予定)、しかもプレイステーション4の本体がないと使えません。年金生活者にはつらいところ。ま、しばらくは様子見しかないのでしょうな。


 などと悠長に言ってる場合じゃなかった!無料更新期限まであと数日に迫っている、Windows10 へのアップデートがまだできてないのですよ。

 すでに3回、アップデートを試みて失敗しました。長時間のダウンロードがようやく終わって「インストールの準備をしています」のメッセージがでるところまではよいのですが、しばらくすると止まってしまい、あとはうんともすんとも動きません。

 参考書やネット上の記事を読んで、いろいろ試してみましたが効果なし。ついに Windows Update による更新をあきらめて、クリーンインストールを行うことにしました。USBメモリにインストール用のファイルをダウンロードする作業は順調に進み、あと少しというところで突然のエラー!

 もう、どないせいっちゅうねん!と怒り心頭、怒髪衝天。この上は Windows8.1 のまま使うしかなさそうです。次にPCを買い替える頃までサポートは続くようだし、問題ないといえばないのですが、心情的になにかすっきりしないのは困ったもんだ。

 しかし、PCについて数々の修羅場をくぐってきた黒吉がこの有様では、皆さんちゃんと更新できているのでしょうか?と余計な心配をしている今日この頃であります。

 

(注)

・暑い日が続くこの場所で…初音ミクが歌う「Innocence」(作詞・作曲KazuP)の歌詞。

・『VRビジネスの衝撃 「仮想世界」が巨大マネーを生む』は新(しん)清士著、NHK出版新書、本年5月刊。

・生身のアイドルの死刑宣告…当ブログの過去記事「みくみく菌にご注意を!」参照。

・(追記)PlaytStation VR は予定どおり10月13日に発売されましたが、予想どおり即日完売。以後はずっと品薄が続いており、メーカーの希望小売価格が44,980円なのに、なんと7万数千円~8万数千円のプレミア価格で売られています。だめだ、こりゃ!

初音ミクVRフューチャーライブ…説明には「プレイヤーはライブ会場を盛り上げる観客のひとりとなって、キャラクターのステージパフォーマンスやインタラクティブなリアクション、現実にはありえない数々の演出が楽しめます」とあります。
(追記)PlayStation VR 発売と同時にプレイステーション・ストアから 1st Stage の配信が開始され、現在 3rd Stage まで配信されています。

・参考書…PCなどについての黒吉の現在の教科書は月刊「Windows 100%」と季刊「iP!」(どちらも晋遊舎刊)。ともに悪用厳禁な情報満載の雑誌なので、よい子にはおすすめいたしかねます。

クリーンインストール…前のバージョンの Windows に上書きするのではなく、まっさらの状態からインストールし直すこと。確実だけど、手間と時間がたいへん。

・数々の修羅場をくぐってきた…黒吉は1980年代前半、つまりパソコン黎明期からのユーザーなので、少しはスキルがあると自負しているのですが…。

 

ハリス・バーディックの憂鬱 ~ To read, or not to read ? ~ …2016年7月5日

 ご無沙汰しております。このひと月の間、何故か万事につけてモチベーションが極めて低下し、歩く粗大ごみ化していました。家人には周回遅れの五月病だと笑われています。梅雨も明ける頃だし、そろそろ復活といきましょう。

 さて、ハリス・バーディックという人をご存知でしょうか?彼は1950年代のある日、米国の児童文学出版社にふらりと現れ自作の出版を持ちかけます。14の物語を書き、挿し絵もたくさん用意したとのことで、サンプルとして各話一枚ずつを持参していました。それらの絵に魅了された編集者は、翌日残りの原稿を見せてくれるように約束して、その日は別れました。しかしバーディック氏が二度と訪れることはなく、編集者の手元には14枚の挿し絵だけが残ったのです。

 その挿し絵を複製したというのがクリス・ヴァン・オールズバーグの絵本「ハリス・バーディックの謎」です。パステル画特有の暖かさを持ちながらも、透明でどこかノスタルジックな絵によって描かれる不思議な世界。非日常の空間から切り取られてきたある瞬間。それに短い文章が添えられています。

 たとえば、日差しの明るい水際で水面を見つめる男の子と女の子。二人の視線の先には宙に浮いた小石がひとつ水に影を落としています。「七月の奇妙な日」というタイトルで「彼は思い切り投げた。でもみっつめの石は跳ねながら戻ってきた」と説明があります。

 また「七つの椅子」という話では、光が差し込む大きな教会というより聖堂の中空に、椅子に腰かけたシスターがひとり浮かんでいます。それを静かに見上げる二人の人物は東洋風の衣装を身にまとっていて、添え書きは「五つめは結局フランスでみつかった」とだけ。

 それ以外に何も説明はありません。全編この調子であとは読む者の想像次第。

 そういう訳で、たかだか30ページほどの絵本なのに、何時間でも楽しめる、しかも読むたびに新しい発見があるという類をみない一冊なのです。黒吉のマイ・フェイバリット絵本、殿堂入り(どんな殿堂?)。

 どっかのCMじゃないけど、これ以上何も引かない、なにも足さない、必要にして十分、というのがこの本の身上であると勝手に思っていました。ところが「ハリス・バーディック年代記」なる本が出てしまったのです。

 スティーヴン・キングコリイ・ドクトロウなど錚々たる面々が、それぞれの絵にまつわる物語を書き下ろしたアンソロジーです。まったく余計なことを!原著者は納得してるんかい?と目次をみると、あろうことか13話目の「オスカーとアルフォンス」は当のオールズバーグが書いてるじゃありませんか。

 とにかく、一度読んでしまうと、以後は原作絵本を開くたびに「年代記」のイメージが邪魔をすると思うので、せっかく大枚はたいて買った本なのに死ぬまで読むことはないと断言できます。それでも未練がましく、ときどき取り出しては序文だけ読んで、ため息とともに書棚に戻すという、お馬鹿な黒吉でありました。


(注)

・クリス・ヴァン・オールズバーグは米国の絵本作家。代表作は映画化もされた「ジュマンジ」Jumanji(1981)、「急行「北極号」」 The Polar Express(1985)など。なお、この2冊は米国図書館協会の選ぶ「カルデコット賞」の受賞作でもあります。多くの作品の邦訳を村上春樹さんが手がけています。

・「ハリス・バーディックの謎」The Mysteries of Harris Burdick(1984)の邦訳は河出書房新社 1990年。

・「ハリス・バーディック年代記 14のものすごいものがたり」The Chronicles of Harris Burdick:14 Amazing Authors Tell the Tales(2011)の邦訳も河出書房新社 2015年。

・ステキン先生はご夫婦で参加。奥さんのタビサ・キングが第1話「天才少年、アーチー・スミス」を、旦那が最終話「メイプル・ストリートの家」を担当。

コリイ・ドクトロウはカナダのSF作家、ローカス賞受賞作「マジック・キングダムで落ちぶれて」Down and Out in the Magic Kingdom(2003)(ハヤカワ文庫SF 2005)など。

・大枚はたいて…金2,500円なり(税別)。黒吉には大金!

・死ぬまで読むことはない…じゃ、何で買ったんだよ? だって、気がついたら買ってたんだもの。

・序文を書いたのはレモニー・スニケット。この人については「世にも不幸なできごと」シリーズ(草思社)または映画「レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語」Lemony Snicket's A Series of Unfortunate Events(2004) 参照。

 

ヴァンパイア小説総ざらえ その4 ゼロ年代以降 …2016年6月1日

 6月といえば、初音ミクさんの北米10都市ライヴツアーも、5日のメキシコシティーを残すのみ。疲れが出ないように(真顔)がんばっていただきたいと応援していますよ。

 さて、何の話だっけ、あ、そうそう、ヴァンパイア小説の続きでしたね。では…

 

アイリッシュ・ヴァンパイア」ボブ・カラン著 Bloody Irish(2002)
 早川書房(2003)
 近代吸血鬼小説の祖「カーミラ」と「ドラキュラ」の作者はいずれもアイルランド人。なので、そこにはケルト的な幻想が色濃く反映されている、というのがカランの持論。その伝統を継ぐべく書かれた吸血鬼小説集。怪奇小説としても逸品ぞろい。

 

「サンシャイン&ヴァンパイア」(上・下) ロビン・マッキンリイ著 Sunshine(2003)
 扶桑社ミステリー(2007)
 魔物と人間の大戦争の10年後、人間社会の一角には魔物たちのテリトリーが。そこへ拉致された女性が自らの力に目覚め、吸血鬼と不思議な関係に。ニューベリー賞受賞作家によるファンタジー。

 

「ザ・ストレインギレルモ・デル・トロ&チャック・ホーガン著 The Strain(2009)
早川書房(2009)→「沈黙のエクリプス」(上・下)ハヤカワ文庫NV
「暗黒のメルトダウン」(上・下) The Fall(2010)
 ハヤカワ文庫NV(2012)
「永遠の夜」(上・下) The Night Eternal(2011)
 ハヤカワ文庫NV(2012)
 滑走路上で沈黙した旅客機。そこからまん延する謎の悪疫により、崩壊していく人間社会。それは太古の種族の復活を意味していた。「パンズ・ラビリンス」「パシフィック・リム」などで知られる映画監督によるノンストップ・アクション・ホラー3部作。

 第2巻で人類は崖っぷちに追い詰められます。第3巻はほとんどポスト・アポカリプスの様相を呈していますが、クライマックスでは、思わず何じゃこりゃ?と叫んでしまうトンでもな展開が…。でも、面白さは保証いたします。

 

「新ドラキュラ 不死者」(上・下) デイカー・ストーカー&イアン・ホルト著 Dracula:The Un-dead(2009)
 MF文庫ダ・ヴィンチメディアファクトリー)(2013)
 ブラム・ストーカーの子孫が書いたという触れ込みの続編。エリザベト・バートリや切り裂きジャックをからめたりして、工夫したつもりかも知れませんが、ドラキュラ愛に死す、というのはどうよ?吸血鬼軟派化の波はついに御大にまで!そういや「ドラキュラZERO」という似たような映画もありましたな。公式新作とうたっておりますが、黒吉は断固認めません!ヴラド公、地獄から鉄槌をお願いします。

 

ヴァンパイアハンターリンカーン」 セス・グレアム=スミス著 Abraham Lincoln Vampire Hunter(2010)
 新書館(文庫判)(2011)
 「リンカーン/秘密の書」という映画の方が有名かも。大統領の死後に発見された秘密の日記という体裁で、もうひとつのアメリカ史が語られます。おバカなアイデアを、ものすごい力技ですぐれた歴史改変小説に仕上げています。著者については「高慢と偏見とゾンビ」の一発屋だろうとたかをくくっていたのですが、ほんにお見それいたしました、へへーっ!

 

「殺戮病院」 ブレイク・クラウチ、ジャック・キルボーン、ジェフ・ストランド&F・ポール・ウィルスン著 Draculas(2010)
 マグノリアブックス(オークラ出版)(2016)
 TVドラマ「ウェイワードパインズ出口のない街」の原作者クラウチや大家のウィルスンなど豪華メンバーによる合作。ルーマニアで発掘された異形の頭蓋骨に噛みつかれた医師は、同様の怪物に変貌。次々に感染してゆく人々。隔離された病院から脱出する術はあるのか…って、ほとんどゾンビものじゃんこれ!ま、面白いからいいけど。

 

 ふう、やっと現在にたどり着きました。それにしても見事に英米系ばかりですな。他の国では書かれていないのか、それとも翻訳されていないだけなのか?ご教示いただければ幸いです。あっ、しまった!1冊忘れていました。

 

「MORSEモールス」(上・下) ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト著 Lat Den Ratte Komma In(2004)
 ハヤカワ文庫NV(2009)
 珍しくスウェーデン産です。小さな町に引っ越してきた少女の周辺で起こる残酷な殺人事件。主人公の少年(12歳)の初恋は胸がしめつけられるような哀しい結末に。吸血鬼小説の伝統を継ぐ、恐ろしくも美しい佳品。

 

 あと、本家?ルーマニアの作家ミルチャ・エリアーデの「令嬢クリスティナ」(作品社 1995年刊)なる1冊があったはずなのに、どこをどう探しても見つからない。紛失したのか、間違って売っぱらったのか?まことに申し訳ありません。

 

 他には「ドラキュラ紀元」のヒロイン、ジュヌヴィエーヴちゃんの活躍する3部作があるのですが、「ウォーハンマー」というゲーム(RPG)世界を舞台とする異世界ファンタジーなので、パスしました。参考までにデータを書いておきます。著者のジャック・ヨーヴィルキム・ニューマンの別名です。

ドラッケンフェルズ」Drachenfels (1989) HJ文庫G(ホビージャパン)(2007)
「吸血鬼ジュヌヴィエーヴ」Genevieve Undead (1993) HJ文庫G(ホビージャパン)(2007)
「ベルベットビースト」Beasts in Velvet (1991) HJ文庫G(ホビージャパン)(2007)

「シルバーネイル」Silver Nails(2002)HJ文庫G(ホビージャパン)(2008)…短篇集

 それにしてもジュヌちゃんはヴラド公よりも年上なのに、見た目は少女、永遠の16歳。初音ミクさんみたいだ。かわいいのう!え、初め(その1)に言うたことと全然違うやないかって?さぁ、そんなことも申しましたかのう。どうも年寄りは忘れっぽくていけませんな。はっはっは。では、さいならー


(注)

ジョン・ニューベリー賞は米国児童図書館協会が毎年、すぐれた児童文学の著者に授与する賞。マッキンリイの受賞は1985年「英雄と王冠」(ダマール王国物語2 ハヤカワ文庫FT 1987年)で。

・「パンズ・ラビリンス」El laberinto del fauno はメキシコ・スペイン・米合作のダーク・ファンタジー映画。2006年公開。撮影、美術、メイクの3部門でオスカー獲得。

・「パシフィック・リム」Pacific Rim は2013年公開の米ワーナー映画。巨大怪獣を有人の巨大ロボットで退治する話。日本のアニメ・特撮へのオマージュ満載。でも、黒吉的には怪獣やロボットのキャラが立ってないので、いまいち好みではありません。それから戦闘シーン暗すぎ。白昼堂々とやるべし。

・エリザベト・バートリは16世紀ハンガリーの貴族。「血の伯爵夫人」の名で知られる伝説的な連続殺人者。吸血鬼のイメージで語られることも多い。

・「ドラキュラZERO」Dracula Untold は2014年公開の米ユニヴァーサル映画。キャッチコピーの「その男、悪にして英雄。愛する者のため、悪にこの身を捧げよう―」がすべてを語っています。けっけっけ!なお、ユニヴァーサルはこの映画が当たれば、シリーズにして往年のモンスターを続々と復活させようと目論んでいたようですが、大コケにコケたのであきらめたみたい。ご同慶の至り。

・「リンカーン/秘密の書」Abraham Lincoln: Vampire Hunter は2012年公開のフォックス映画。制作はあのティム・バートン

・「高慢と偏見とゾンビ」Pride and Prejudice and Zombies(2009)はあのジェーン・オースティンの名作に、あろうことかゾンビをこきまぜた、いわゆるマッシュアップ小説。原作の文章の7割はそのままだとか。邦訳は二見文庫(2010年)。ジェーンおばさん天国で怒ってると思いますよ。

・「ウェイワードパインズ 出口のない街」Wayward Pines (2015-2016) は米フォックス制作のTVシリーズ。現在のところ2シーズン20話。M・ナイト・シャマランが監督したというので話題に。原作は「パインズ -美しい地獄ー」(ハヤカワ文庫NV 2014年)で始まる3部作。

 

線路はつづくよどこまでも ~不思議鉄道マンガのこと~ …2016年5月28日

 最近、マンガ本を買うことが少なくなりました。かつては毎月平均7、8冊、年間で100冊くらい買っていた時期もあったのですが、次第に減って、最近では多い月でも3冊くらい。全然買わない月も珍しくありません。

 週刊誌系のマンガ本を買わなくなったこともありますが、購入冊数減の最大の原因はやはり歳のせいだと思います。話題の「進撃の巨人」「テラフォーマーズ」など、面白いと感じるマンガは少なくありません。しかし、身近に置いていつでも読めるようにしたいと思える作品がめっきり減ってきました。

 つまり、面白いというだけでなく、感覚的に黒吉の波長と合うものでなければ買う気が起きません。このあたりが保守的になったというか、柔軟性を失って、若い作者の感性とギャップが生じているのではないかと考えています。

 ですから、マンガ本を買うときも、諸星大二郎高橋葉介ふくやまけいこ等々、昔から活躍されている方々の作品がメインになっています。そんな黒吉ですが、それでも、たまに未知のマンガ家の作品に手をのばすことがあります。

 そんな1冊(全2巻だけど)がkashmirさんの「てるみな」(2013年、2015年、白泉社刊)。表紙に猫耳のロリっ娘が描かれていて、一見萌え系のマンガみたいですが、中身は大違い。基本は鉄道大好き少女が東京?都内や近郊の路線を巡る話。ところが、駅に着いた時点から少しずつ世界が変質して、発車したあとは完全な異界に突入します。

 「千と千尋の神隠し」に出てくる水上列車より、もっと不条理で不吉な世界が展開します。どちらかといえばつげ義春さんの「ねじ式」なんかの世界に近い感触ですが、こちらの方がずっと怖いです。たとえば、うっかり降りると、改札に巨大な歯が並んでいて噛みつぶされてしまう駅とか、坂を上るために(客を乗せたまま)切り離された車両が死屍累々になっている山岳線とか…。

 それでも、主人公の猫耳少女はショックを受けたり、怖がったりという様子もなく、ゆるゆると異様な旅を楽しんでいる風情です。ですから、読後感はホラーマンガのそれではなく、ちょっと不思議テイストな日常系マンガといったところでしょうか。黒吉は小説でも「奇妙な味」が大好きなので、とても気に入りました。

 続編「ぱらのま」が同じ版元の「楽園(ル・パラディ)」という雑誌に連載されているのですが、なんと年3回刊!単行本にまとまるのはいつのことやら…。

 

(追記)「ぱらのま」は先日めでたく第1巻が刊行されました。”ぱらのま”とは paranormal のことだと思っていましたが、不思議系は第1話だけでした。第5話に「てるみな」の女の子がゲスト出演しているので、同じ世界ではあるようです。


(注)

・週刊誌系のマンガ…唯一買い続けているのは椎名高志さんの「絶対可憐チルドレン」。最新刊は第47巻。それにしても、長期連載が前提で、ちょっと人気が出ると、いつまでもだらだらと続けるシステムを根本から考え直さないと、マンガ文化そのものが弱体化するのでは、と危機感を覚えます。終わり時を失って迷走する作品も気の毒だし、読者も不幸せ、何よりマンガ家の才能を浪費しちゃうのが大問題。様々な作品を生み出せる、金のニワトリを殺すようなもんだと黒吉は思いますよ(特に、本来が短編向きのマンガ家はどうすりゃいいんだ?)。

・ほかに買っているのは、あさりよしとお芦奈野ひとし海野蛍後藤羽矢子山本貴嗣(あつじ)など(敬称略)。幸か不幸か寡作な人が多いです。

・kashmirさんは「カシミア」と読むのでしょうか。かつて愛読していた月刊「電撃大王」で「百合星人ナオコさん」を連載されていた方とは、今回調べるまで気がつきませんでした。

猫耳は基本的に好きです。ミクさんにもよく似合うし、最近よく観るMMDのPVでは、東方プロジェクトの八雲藍姐さんが、チャイナ服で色っぽく踊る「Lamb」が素敵。え、あれはキツネだって?失礼しました!

・黒吉は「千と千尋の神隠し」のノスタルジックで不思議な世界が大好きです。とくに夜、海の向こうに光って見える街とか、列車の車窓から見える風景とか…。あの奥行きのある世界は、ピクサーあたりには逆立ちしたって無理でしょう。

・そういえば「ねじ式」にも変なSL列車が出てきますね。